〜めまいについて〜


神経耳科の充実した施設は別にして、眩暈(メマイ)も私ども脳神経外科を訪れる患者さんの症状として多いものの一つです。

 さて、教科書的にはメマイには大きく分けて 以下の2つに分かれ、これを区別する必要があります。もちろんこれはメマイという種々の原因で起こる臨床症状を人間が勝手に分類したものですので、必ずしもこうクリアカットに分けられるものではありません。しかし、この分け方は理解しやすく、一応の目安にはなると思います。

1.「末梢性のメマイ」つまりは内耳、前庭神経、およびその核、これらと密接な関係にある小脳の障害によるもの
2.「中枢性のメマイ」つまりこれらの部より高位の中枢神経系の障害によるもの

 症状的に前者は回転感を伴ういわゆる「定型的メマイ」を呈し、症状の程度が強く、頭位や体位を変える事により症状が増悪します。また耳鳴や難聴などの症状を多くは伴います。しかし他の神経症状を合併する事は少ないといった特徴があります。一方、後者は全くこの逆で、つまりメマイと言っても身体不安定感が主症状で、症状の程度は軽く、頭位や体位変換との関係はあまりありません。また他の神経症状を合併する事が多いのですが、その一方耳鳴や難聴を伴いません。

 回転感を伴ういわゆる「定型的メマイ」をきたす疾患には以下のようなものがあげられます。

1. 耳の疾患によるもの
…メニエール病、薬物による障害(ストマイなど)、外傷性の内耳障害、耳石障害(頭位発作性メマイなど特定の体位をとったときのみにおこるもの)、炎症(中耳炎、迷路炎)、突発性難聴など
2. 聴神経障害によるもの
…聴神経自体およびその近くににできる腫瘍、血管圧迫症、ウイルス性聴神経炎、前庭神経炎、外傷など
3. 前庭神経核および脳幹障害によるもの
…椎骨脳底動脈循環不全症、椎骨脳底動脈系の閉塞、小脳出血、小脳梗塞、頭部外傷など
4. 頸部に起因するもの
変形性頚椎証、むち打ち損傷、頸部の筋膜以上による椎骨動脈圧迫など


 ここで、メニエール病に関して触れます。

 メニエール病は内耳障害により発作性に回転性メマイを起こし、耳鳴、難聴などの蝸牛症状を伴う。30〜60歳に多く発症するとされています。

 厚生省特定疾患調査研究班によるメニエール病の診断の手引きを以下に示します。

1.回転性メマイ発作を反復すること
・メマイは一般に特別の誘因なく発来し、嘔き気、嘔吐を伴い、数分ないし数時間持続する
・発作の中には、「回転性」メマイでない場合もある
・発作中は水平、回旋混合性の自発眼振をみる事が多い
・反復性の確認されぬ初回発作では、メマイを伴う突発性難聴と十分鑑別されなければならない
2.耳鳴、難聴などの蝸牛症状が反復、消長すること
・耳鳴、難聴の両方またはいずれかの変動に伴い、メマイ発作をきたすことが多い
・耳閉塞感や強い音に対する過敏性を訴える例も多い
・聴力検査では、著明な中・低音部域値変動や音の大きさの捕充現象陽性を呈することが多い
・一耳罹患を原則とするが両耳の場合もみられる
3.l、2の症侯をきたす中枢神経疾患、ならびに原因既知のメマイ、難聴を主訴とする疾患が除外できる(これらの疾患を除外するためには、問診、一般神経学的検査、平衡機能検査、聴力検査などを含む専門的な臨床検査を行ない、ときには経過観察が必要な場合もある)

診断の基準
・確実例:1、2、3の全条件を充たすもの
・疑い例:1と3、または2と3の条件を充たすもの
(注)1、2の症侯の原疾患として、十分に中耳炎、中毒書梅毒などの原因既知の疾患を除外しえなかったときは、これらの疾患を併記することとする。


 また、最近メマイ発作が再発する一部の人で、脳から聴神経が出て末梢に分布する走行中に脳の小さな動脈が触れており、これがメマイ発作を起こしている場合がある事がわかって来ました。以前から顔面の片側の筋肉がピクピクする「顔面ケイレン」や顔面が発作的に非常に痛くなる「三叉神経痛」などはその殆どがこの神経と血管の接触によるものである事が判明しており、積極的に外科手術でこの神経と血管の減圧術が行なわれる様になってきております。聴神経の場合はその機能が顔面を動かす顔面神経や顔面の知覚を司る三叉神経と比較して少々複雑であり、またメマイの原因自体が非常に多岐にわたっていますので、顔面ケイレンや三叉神経痛の様にはクリアカットではない面がありますが、確かに一部の症例はこれが原因となっているものがあるのは事実で、これと診断するには神経耳科的にクライテリア(診断基準)がある様です。

 以上、参考になれば幸いです。


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