〜頭を強く打った時について〜



 以下は私の現在勤務する苫小牧日翔病院の脳神経外科外来にある「頭部外傷後の注意書き」です。

 苫小牧日翔病院では頭部外傷の患者さんには、なんともなさそうな場合でもこの書類をさしあげて、注意を促しております。


頭部外傷後の注意

 あなたを診察した結果,現在のところ神経学的には特に異常が認められませんでした。自宅で静養していただいて結構ですが、今後少くとも24時間は下記の事項に気をつけてください。次にあげる様な症状があれば、至急当院にご相談ください。

1.意識の状態に変化がある時:意識が薄れてきたり,なくなってきたりする時
2.頭痛が段々と強くなる時
2.嘔気、嘔吐を繰り返す時
3.何かつじつまの含わないことを言ったりする時 子供の場合:いつも喜ぶものや興味を示すもの(例えばテレビのマンガ)に関心がなく、どこかぼんやりしている時
4.痙攣(引きつけ)を起こす時
5.口がもつれてきたり、手足のいずれかが不自由になってくる時
6.落ちつきがなくなる時
7.その他変わったことがある時(例えば発熱が持続する時など)

本日は次のようなことに留意してください
1.できるだけ静かにしていること
2.振動するものに乗らないこと,子供の場合は抱き上げて振り回さないこと
3.入浴はさしひかえること
4.万一嘔吐したときのことを考えて,食事はひかえめにし,消化のよいものを摂取すること
5.アルコール類やチョコレートなどの刺激の強い食べ物はひかえること

 一般に数日間、異常がなければ、今回の頭部外傷に関する後遺症の心配はありません。ただし比較的お年よりに多いのですが、「慢性硬膜下血腫」といって、外傷後数週してから少しずつ頭の中に血が溜まることが稀にあります。 このころに、上にあげた症状が出てくれば病院で診察を受けてください。

〔       〕殿  平成 年 月 日
連絡先:苫小牧日翔病院 脳神経外科 連絡番号: (0144)72-7000
担当医:        


 というわけで頭部外傷の場合に、危険な状態と判断する最も重要で、かつ医師でなくとも簡単に見分けられるものは「意識状態」です。 意識障害の存在は脳の損傷(脳挫傷)および頭蓋内に出血(頭蓋内血腫)している可能性を示唆します。それに加えて意識障害がない場合でも、上にあげた様な、なんらかのいつもとは違った症状が出る場合などは一応、「要注意」と判断した方が賢明です。もちろん上にあげた症状は頭部外傷以外の原因疾患にも伴いますが、頭部外傷において「危険である」という一応の目安となるものです。例えば頭痛、嘔気、嘔吐は血腫や脳挫傷により頭蓋の圧(頭蓋内圧)が高まった一つのサインです。痙攣(引きつけ)や口のもつれ、手足の麻痺などは脳の局所の障害のサインで、これは頭蓋内血腫の増大によりその場所にある脳が圧迫されて、局所の脳機能が障害された事や、また直接脳が壊れる(脳挫傷)による局所の脳機能障害の可能性を示唆するものです。何かつじつまの含わないことを言ったりする、どこかぼんやりしている、落ちつきがない等は同じく頭部外傷によるなんらかの脳機能の障害による精神症状を示唆します。

 さらに、子供の場合は成人の場合と異なり頭部外傷には以下の特徴があります。 まず、子供は頭でっかち(新生児は4頭身、2歳で5頭身、6歳で6頭身と言われています)なので、つまり重心が高く、転倒などで非常に頭部をぶつけやすいものです。また頭蓋骨が薄く、直下の脳の損傷が起こりやすいのですが、一般に言って小児の脳自体は衝撃に対して成人より強く、発展途上にある脳であるので、いったん障害をうけると非可逆的となる反面、機能障害も代償されやすく神経学的脱落症状の回復も早いという特徴があります。逆に頭部外傷を受けて意識障害をきたした時はよほど強い損傷を受けていると考えられます。その他、脳浮腫といって脳が腫れやすい、嘔吐しやすい、外傷後の癲癇の発生率が成人より高い事などがあげられます。

 以上、参考になれば幸いです。



Copyright(C) Team IHJ 1996-2007 CEDARS Communications Co.,Ltd. All rights reserved.