〜色々なタイプの睡眠障害について〜


o.朝きもちよく起きるために
 目覚めの気分を決めるのは睡眠の内容自体よりも目を覚ますタイミングです。夢を見 ていることが多いレム睡眠の終わるころというのは大脳もかなり覚醒に移行しやすい 条件が揃っています。レム睡眠で夢を見終わった頃に起きるのがベストタイミングで す。

 何時におきると朝きもちよく起きることができるか計算してみましょう。まず 1.5時間の倍数を睡眠時間の節目と考えて、起きるタイマー時間を設定するとよいです 。12時に布団に入るとして寝付くまで平均30分として1.5×4で6時間を足すと朝6時3 0分がスッキリタイムです。この式を無視してこれ以外の時間に時計をセットすると ぼんやりして不快感も相当なものになります。

日曜日に遅くまで寝ているのはやめましょう。土曜の夜は休みだからと夜中の3時ま で起きていたとします。朝7時に起きるといつもより睡眠時間が足りないので朝10時 まで寝ていても、スッキリした目覚めにはなりません。睡眠は8時間とらないといけ ない先入観があるため、ついつい、いつもとタイミングのずれた時間に起きると日曜 日は国内時差ぼけ状態で一日中ぼんやりと終わってしまいます。さらには月曜の朝の 目覚めも優れず、いわゆる月曜病に陥ります。睡眠は普通6時間半もあれば充分です から、夜更かしでも日曜日の朝はいつもと同じ時間に起きましょう。

 次に朝に少し熱つ目の風呂に入り身体の温度を上昇させると目覚めがよくなります。 シャワーでも効果があります。そして朝御飯を沢山食べることです。大切なのは、ど ちらも起きたばかりの頭を起こすのに身体の温度を朝のうちに上げてしまう工夫です 。更に朝出勤に30分程日光浴を兼ねて徒歩時間を挿入すると、効果はさらに高まり仕事 開始時間から全開状態にもっていけることでしょう。

p.ぐっすり眠れる衛生学
 1人は一日に7-8時間ほど眠ります。仮に80才まで生きたとすると約25年間は眠ってい る計算になります。この長い時間を過ごす眠りの環境について今一度じっくり見直し てみましょう。

 まず眠る時間帯は一定にしていますか。眠る時間を平日は短くして週末に補充すると いう習慣は避けましょう。眠るときにパジャマを着て洗面をし歯磨きをしてすぐ布団 に入るという一連の動作を習慣化して連続して行なうと眠りを誘い易くなります。一 種の条件反射を利用しているわけです。

 次に眠りと食事との関連にも注意しましょう。夜遅くに食事を沢山とると眠りを妨 げますし肥満の原因にもなります。ミルクか何か温かい物を飲むとよく眠れたという 人もいます。コーヒーやカフェイン入り飲料は食事のメニューから外しましょう。ア ルコール類はすぐ寝付けますが後半は途中覚醒が多くなるので結局は避けるべきです 。また睡眠を妨げる傾向のある医薬品を飲んでいないかも確かめて下さい。 適度な運動は眠りを助けるようですが夕方か早朝にするべきです。夜遅くの運動はか えって眠りを妨げてしまいます。

 そして、ゆったりとした夕べを過ごせるような計画も立ててみましょう。夜遅く仕事 から帰宅し遅くに夕食を済ませ仕事があるから翌朝早く起きようと布団に直行すると いった生活パタ−ンを繰り返していては眠れません。このように失われた『夕べのひ ととき』を安らかに過ごせるような一日の時間の使い方を総点検し組み立て直す必要 があります。

 眠らないのに布団に横になっていませんか。もし布団に横になっても眠れないと分 かったら起きて別の部屋に移動し眠たくなったら寝室に戻るようにします。布団に入 ったら決して眠ろうとなどと考えず、むしろこのまま布団のなかでどれだけ眠らない でいられるのかと頑張ってみる。「布団に入ったからといって眠らなくてもよいのだ 」と考えた瞬間、どれだけ気分が楽になることでしょうか。そして、この安心感が朝 までの睡眠を自然に誘ってくれるはずです。

 寝室は眠るによいように整え安らぎと快適さが必要です。光は朝の目覚めに一番影響 を与えるようで寝室の窓から朝日がこぼれると日の出の時刻に合わせて目覚めが早く なります。夏などは特に厚いカーテンで遮光しましょう。仕事やストレスが尾を引く ような職場から持ち返った仕事をしたり金銭を扱ったりする事務机が寝室にあっては なりません。肌と接する衣服の温度は32℃、湿度は50%が快適条件です。枕は首や肩 まで支える少し大き目のものを選びましょう。

 こうした睡眠の衛生学を心掛けても眠れず治療が必要な不眠症もあります。オネショ に泣いている子供たち、深夜まで眠れず朝寝坊が毎日続く睡眠相後退症候群のため学 校にも行けず悩んでいる若者、肥満などから激しいイビキをかき眠っている間に呼吸 が止まり不眠症に悩む睡眠時無呼吸症候群の方には薬や吸入器が必要なこともありま す。こうした睡眠障害の診断には眠りの深さや異常を一晩中モニタ−する終夜睡眠検 査を受けて自分の眠りをチェックしてみてはいかがでしょうか。

 眠りは豊かな生活を支える基本要素のひとつです。職場の精神衛生面や仕事の能率、 スポ−ツでのメンタル管理や創造的活動の要としても睡眠は今後ますます大切になっ てくることでしょう。

q.〜「眠れない」〜あなたはどうする睡眠のメカニズムと不眠症
 豊かな健康生活をめざすに欠かせない「ヒポクラテスの基本生活」とは確固とした考 え方のもとに、適切な時間帯に、よい食事、よい睡眠、よい休養、よい運動、そして よい仕事を心掛けることだそうです。豊かな健康生活を確保するために欠かせない要 素のひとつである「睡眠」について考えてみましょう。

 現代人の多くは睡眠に満足感を得られず悩んでいます。私達を取り巻く環境はより複雑化する一方で、夜更かしな ど生活リズムも不規則になりやすくストレスも高まり、更にアルコールやコーヒーの摂 り過ぎなどと睡眠に悪い影響を及ぼす要因があふれています。余りにもきっちりと眠 ろうと努力するほどかえって緊張して眠れなくなる不眠症にかかる人もいます。

 終夜睡眠ポリグラフ検査を行ない眠っている間の睡眠状態を検査すると,寝入りばなに 深い眠りに入った後は、ほぼ90分毎にレム(REM)睡眠期とノンレム睡眠期を繰り返し て朝を迎えます。レム睡眠期は比較的浅い睡眠状態のまま眼球が激しく左右に動くの でRapid Eye Movement の頭文字を取ってREM期といっています。身体の筋肉の力が抜 けて動けない状態になっていますが脳のなかは活発に動いていて多くは夢をみている ようです。レム睡眠の途中で目覚めた場合は、見ていた夢を思い出すことができます。



 ところで夢は何故見るのでしょうか。最近は色々な説が出ています。例えば、これか ら自分がやろうとする考えや行動を夢の中でリハーサルしているという説です。うま いことにレム睡眠中には活発な脳の活動が手足の神経にあまり影響しない仕組みにな っています。この仕組みが外れると寝言、夜驚症、夢遊病などになります。出生直後 の赤ん坊は眠っている時間の半分はレム睡眠に当てています。脳神経同志の回線を張 り巡らし脳が発育するときにも夢を借りて、つないだ回線のテストをしているのでし ょうか。生まれてすぐ泣いたり乳を吸うことができるのは生存に必要な行動をレム期 に練習しているらしいのです。子宮のなかで実際にこうした行動をする胎児の写真も 撮影されています。

 まだ他の説もあります。今日一日に頭に入れた記憶を脳のなかで映像化し、これを長 期記憶という場所に納め直す整理作業が夢だというのです。忘れてしまいたいイヤな 記憶は一度夢に出してここで捨ててしまえばよいのですから悪夢必ずしも凶ではない ことになりますね。モニター室のなかで眠りレム睡眠を選択的に剥奪する実験をする と日中でも眼を閉じた瞬間に夢を見るようになります。身体は剥奪されたレム睡眠を わずかな隙間をついてでも取り戻そうと頑張ります。更には夢が幻覚として感じられ るようになります。

 レム睡眠以外の睡眠期をノンレム睡眠といいます。「寝る子は育つ」とよく言います が、寝入りばなの深いノンレム睡眠期に限り通常の10倍以上の成長ホルモンが下垂体 から血液中に毎晩放出されていることが20年前に日本の学者によって発見されました 。このホルモンはたんぱく質を同化し骨を伸ばす働きがあります。でも夜更しをして から眠っても成長ホルモンの放出は少なくなりますし思春期の子供をよく寝かせない と成長が伸びなやむことも分かってきました。成長ホルモンは身体の修復に必要なた んぱく質の合成を促進しますから、大人ではノンレム睡眠は身体の疲労を回復させる のにも重要な役割があります。ちなみに30才台になると深いノンレム睡眠の割合も成 長ホルモンの放出も徐々に少なくなってきます。

 断眠を続けさせると隙間を突いてでも秒単位で眠ろうとマイクロスリープという形で も身体は自然に睡眠を補いますので眠れなかったといって焦って自分を寝かせ着けな くてもよいことになります。

 さて動物も夢をみるのでしょうか。昆虫も金魚や亀も原始睡眠といってただ身体を休 ませるだけでヒトのような睡眠をとれるのは鳥類と哺乳類といった恒温動物に限られ るようです。爬虫類とされている恐竜は最近になって実は恒温動物だったという話も ありますから恐竜も夢を見ていたのでしょうかね。ネコも夢を見ていますので色々な 睡眠研究に使われています。

 正常な作業水準を維持するのに一日最低3時間眠ればよいという学者がいます。しか し現実問題として高次の認知機能の低下を考慮しなければならないのでどれだけ睡眠 時間を確保すれば十分なのかはまだはっきり分かっていません。医学的には一応5時 間以下の睡眠時間で十分な人を短時間睡眠者といい10時間以上睡眠を必要とする人を 長時間睡眠者といっていますが治療の対象とはしていません。睡眠時間とは社会的に 決められた要素もあります。20年前の日本人の平均睡眠時間は7時間50分程度でした が現在では7時間程度に減少しており社会が忙しくなっていることを示しています。 成人日本人の布団に入って寝付くまでの平均時間は約30分です。


Copyright(C) Team IHJ 1996-2007 CEDARS Communications Co.,Ltd. All rights reserved.